京都も緊急事態宣言が月末まで延長され飲食業には厳しい状況となっています。そのような中、飲食店のお客様の会計を見させていただく機会があるのですが、最近よく感じるのが「売上決済方法の多様化」です。例えば、飲食店のレジでクレジットカード以外にもPayPayやLINEペイ、楽天ペイをはじめとする電子マネーやデビットカードなどを使用される方が増えてきた感じがします。
今回は、複雑化する飲食店の会計を電子マネー等を取引を含め、会計日記帳の記帳や仕訳などを簡単に説明させていただきます。
1.日々の取引の必要性
飲食店の会計でよく問題になるのが日々の現金取引等です。現金取引は記録が残り難く、後から会計処理を行うに当たって苦労することが多いです。事業者の方が確定申告を行うときにも同様のことが言えます。
売上の伝票、支払領収書は残っているのですが、日々の現金残高がいくらかわからない?手許現金有高とあっているのか?など日々の取引記録を残さない限り確認することができません。
税務調査の際も帳簿残高と手許現金有高を確認され、現金管理がずさんな場合や合っていない場合には、売上除外などあらぬ疑いを持たれかねません。
また、税務申告だけでなく、日々の取引の管理は、現金など複数のスタッフも出し入れするため、レジをスルーしたり、使い込みなどのトラブルが発生する可能性もあることも考えられることから、日々しっかり管理を行う必要があります。
2.会計日記帳
毎日の取引を記帳していく便利な帳簿としてよく利用されているのが「会計日記帳」などの日報です。様式は様々で市販の帳簿もございますが、基本は店舗に置いておき、経営者の方だけでなく、スタッフも記帳することとなる帳簿となります。
会計日記帳 サンプル
弊社で作成した会計日記帳は以下のとおりです。
会計日記帳はダウンロードフリーですのでご自身の店舗にあったシートに加工してお使いください。法人の方は、「家事消費」「事業主借」「事業主貸」の勘定科目を削除してください。
▶ダウンロードフリー 会計日記帳(計算式あり)EXCELファイル 63KB
▶ダウンロードフリー 会計日記帳(計算式なし)EXCELファイル 62KB
会計日記帳の説明
【現金取引】
表の左側の「前日より繰越現金残高」「本日の現金入金」「本日の現金出金」「本日の繰越現金残高」はすべて現金取引のみを記載していきます。消費税の課税事業者の方は「税区」の部分がプルダウンリストが表示されますので、消費税区分をまとめておかれることをおすすめします。消費税の申告時に必要となります。消費税免税事業者の方は、税区の記載は不要です。
売上高の部分は、営業終了時に売上伝票を集計して合計値で記載する。
【売上管理表】
表の右上にある売上管理表は、「現金」売上は現金売上の合計、「現金売上以外」の売上でクレジットカードや電子マネーなどは、それぞれ売上合計を記載していきます。すべて足した金額が本日売上合計となり、前頁の月間売上累計+本日売上合計が月間売上累計となります。(クレジットカードや電子マネーは、テイクアウトなど税区が課税売上軽減8%など混在する場合には、会計日記帳を加工する必要があります。)
【現金有高管理表】
表の右中にある現金有高管理表は、実際にレジにあるお金を金種ごとに数えて記載します。現金有高計は④本日現金残高と必ず一致することを確認してください。
【税区分表(消費税)】
表の右下にある税区分表(消費税)は、消費税の課税事業者の場合に使用する税区分表です。現金取引の中の「税区」のところにプルダウンリストで表示されますので、選択するのみで入力可能です。
売上に関連する仕訳
■現金売上
例)現金売上100,000円
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
現金 | 100,000円 | 売上高 | 100,000円 |
■電子マネー、クレジットカード等での売上
現金売上の仕訳は単純なのですが、クレジットカードや電子マネーは後日口座へ振り込まれることから、仕訳は少し複雑となります。
(売上時の仕訳)
例)飲食売上50,000円をPayPayで決済
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
売掛金 | 50,000円 | 売上高 | 50,000円 |
(代金回収時の仕訳)
例)PayPayより取扱手数料を1,000円差し引かれ残金が普通預金に振り込まれた
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
普通預金 | 49,000円 | 売掛金 | 50,000円 |
支払手数料 | 1,000円 |
この仕訳からわかりますように、売上と代金回収のタイミングがずれるため、電子マネーやクレジットカードでの売上を把握する必要がありますので、会計日記帳の売上管理表で区別して記載することになります。
3.勘定科目の解説
仕訳日記帳のエクセルデータの2ページ目にも記載していますが、今回ご紹介しました会計日記帳に添った飲食店で一般的に使用される勘定科目の解説となります。ダウンロードフリーですのでご活用ください。
4.Airレジなどの活用
会計日記帳は手書きやエクセルで日々の取引を管理する方法のご紹介でしたが、この日々の取引も「Airレジ」などを導入して電子化をすることができます。さらに、クラウド会計と連携することにより会計処理を効率化することが可能です。*他メーカも多数ございます。
詳しくは、弊所の前の記事で「現金商売でも使える!クラウド会計」をご覧ください。
▶現金商売でも使える!クラウド会計
5.最後に
飲食店の会計は、以前であれば現金取引が中心で簡単なイメージがありましたが、昨今では、決済方法の多様化により、少し複雑になってきました。自社にあった記帳方法を検討して会計日記帳やAirレジなどをご活用されてみてはいかがでしょうか。
京都・宇治市のケイ・アイ&パートナーズ税理士法人では、飲食店の開業や会計処理・税務のご相談を予約制にて行っていますので、お気軽にお問合せください。