12月12日に令和2年度の税制改正大綱が決定されました。内容的には、NISA制度の拡充や国外中古建物に係る損益通算等の特例を創設、未婚ひとり親に対する税制措置、国外財産情報開示、消費税の居住用賃貸建物の仕入税額控除還付スキームの歯止めなどとなります。今回の改正では、中小企業者にとって大きな影響を与える内容のものは少ないように思えます。今回は中小企業者に関係がありそうな内容を中心に簡単な解説をいたします。
国外中古建物に係る損益通算等の特例
以前の海外中古不動産の節税スキームの記事ですが、やはりこちらに関しては令和2年度税制改正大綱で歯止めとなる措置が決定されました。具体的には、令和3年以降から、「国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合において、その年分の不動産所得の金額の計算上、国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額については生じなかったものとみなす」という内容です。これにより、他の所得と損益通算できなくなり、節税スキームとしては使えなくなりました。
未婚ひとり親に対する税制措置
現状の寡婦控除ですが、特別の寡婦(35万円控除)は、離婚や死別、生死不明など婚姻をしていた者が対象となっていましたが、今回の税制改正では、「現に婚姻をしていない者が、生計一の子を有し合計所得金額が500万円以下であること等の要件を満たす場合」には、未婚のひとり親でも総所得金額等から35万円の控除ができることになりました。会社の年末調整に影響する改正となりますので、決定した場合は計算にご注意ください。
消費税の居住用賃貸建物の仕入税額控除還付スキームの歯止め
居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除制度については、令和2年10月1日以後に「居住用賃貸建物の仕入れを行った場合、仕入税額控除制度の適用を認めない」という内容が税制改正におりこまれました。会社が社員寮などを取得される場合に該当すると考えられますので、税制改正が決定された場合は注意が必要です。