近年、飲食業や建設業・製造業を中心に外国人労働者を雇う機会が多く見受けられます。これからも外国人労働者の活躍が期待される中、年末調整時に悩まれることが多いのが、国外に居住している親族の扶養控除です。令和2年度税制改正大綱では、国外居住親族の扶養控除等の取扱が変わります。今回は、現状と改正後どのようになるのかを簡単にまとめていました。
現状
国外居住親族を扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合は、その国外居住親族に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」を会社(源泉徴収義務者)に提出し、又は提示する必要があります。
[親族関係書類]
親族であることを証する書類は、次の①又は②のいずれかの書類です。
①戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
②外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
[送金関係書類]
送金関係書類については、具体的には次のような書類が該当します。
*送金関係書類は原本に限らずその写しでも取り扱うことが可能ですが、扶養控除等を適用する年に送金等を行ったすべての書類の提出又は提示をする必要があります。
①外国送金依頼書の控え
②クレジットカードの利用明細書
注)送金関係書類については、現状は送金額の基準は特に定められていません。しかし、実務上で混乱することが多いのは、送金等を国外親族の代表者のみにしている場合です。代表者のみに送金している場合は、その代表者のみ送金関係書類に該当し、代表者以外の国外扶養親族は送金関係書類に該当しないことになりますので、国外扶養親族の代表者のみが扶養控除等の対象となります。すべての国外扶養親族を対象とする場合は、個々の国外扶養親族に対し送金等を行う必要があります。また、帰国時や知人を通じて現金で手渡している場合も送金関係書類を提出又は提示ができないので、扶養控除等を適用することはできません。
改正後
国外扶養親族の扶養控除等の適用については、国外扶養親族に係る扶養控除等の対象となる親族から、年齢30歳以上70歳未満の者であって次のいずれにも該当しない者を除外する。
イ 留学により非居住者となった者
ロ 障害者
ハ その居住者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
*1 上記イ又はハに該当する者に係る扶養控除の適用を受けようとする居住者は、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収、給与等の年末調整又は確定申告の際に、上記イ又はハに該当する者であることを明らかにする書類を提出又は提示しなければならない。
*2 上記の改正は令和5年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに令和5年分以後の所得税について適用されます。
国外扶養親族のうち年齢30歳以上70歳未満の者を扶養控除等の適用を受ける場合は、一般的には、上記ハのように個々に38万円以上の送金等が必要となりますので、令和5年以降の扶養控除等の適用は注意が必要です。