新型コロナウィルス拡大防止のため所得税・個人消費税・贈与税の確定申告期限が令和2年4月16日(木)まで延長されましたが、確定申告手続きはお済でしょうか。確定申告で意外と大変で複雑なのが消費税の確定申告です。4%対応、6.3%対応、6.24%軽減税率、7.8%対応…課税売上、課税仕入をそれぞれに振り分けて計算していくのですが、記入していく付表が多く煩雑です。今回は場合によっては活用できる、仕入れ区分が困難な中小企業者に対する経過措置を簡単に説明いたします。
消費税の計算方法
消費税の計算方法は下記の2パターンあります。わかりやすく説明するため詳細な計算などは省いています。
■原則課税
納付税額=課税売上×消費税率-課税仕入等×消費税率
■簡易課税
納付税額=課税売上×消費税率-課税売上消費税額×みなし仕入率*
*みなし仕入率
第1種事業:卸売業・・・90%
第2種事業:小売業、農林水産業〈食用〉・・・80%
第3種事業:鉱業、建設業、製造業、農林水産業〈非食用〉・・・70%
第4種事業:飲食店業〈1~3、5~6種以外の事業〉・・・60%
第5種事業:運輸通信業、金融・保険業、サービス業〈飲食業除く〉・・・50%
第6種事業:不動産業・・・40%
このように簡易課税の方は、課税売上に対する消費税にみなし仕入率を乗じて計算していきますので、消費税の計算は簡単になります。ただし、簡易課税を選択する場合は所轄税務署へ届出が必要となります。
簡易課税制度選択届出書の提出時期
原則は適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに簡易課税制度選択届出書を所轄税務署へ提出することにより適用が受けられます。したがって、届出を出していない場合には、原則課税となります。
簡易課税制度の経過措置
消費税の軽減税率導入に伴い、課税仕入等の区分が困難な事業者に対する簡易課税制度適用に関する経過措置として、令和1年10月1日~令和2年9月30日までの日の属する課税期間においては、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の末日までに所轄税務署へ簡易課税制度選択届出書を提出すれば適用を受けられます。令和1年10月1日~令和2年9月30日までの日の属する課税期間とは、この間に1日でも含まれている課税期間ということになります。また、課税仕入等の区分が困難な事業者とは、納税者レベルによる判断と考えられます。
経過措置の適用を受ける時の簡易課税制度選択届出書様式はこちら
▶国税庁HP 消費税簡易課税制度選択届出書
※簡易課税の経過措置による簡易課税制度選択届出書の提出は、以下の2ヶ所のチェックが必要となります。
簡易課税を選択する上での注意点
簡易課税制度を選択できるのは、前々年又は前事業年度(基準期間)の課税売上が5,000万円以下の事業者です。簡易課税の方が計算は簡単なのですが、安易に選択するのではなく、どちらが有利かなど慎重に検討する必要があります。注意点は以下にまとめてみました。
・課税仕入(実額)の割合が高い事業者は原則課税の方が有利な場合がある。
一般的には、経費に占める人件費など消費税がかからない経費のウエイトが高い事業者は簡易課税が有利な場合が多いです。届出前に現在までの実績や前年実績をベースで原則課税・簡易課税の仮計算を行い比較検討することをおすすめします。
・簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、原則2年間は簡易課税制度を強制適用となります。
・高額な資産の購入した場合には、簡易課税を選択していると実額控除できない。 など
個人事業者の方は、確定申告が終わられホッとしたところかもしれませんが、思ったより消費税が高額になった!計算が大変だった!方は一度検討せれていみてはいかがでしょうか。個人事業者の方は、令和2年度を簡易課税の適用を受けるには令和2年12月末まで(経過措置)に所轄税務署へ簡易課税制度選択届出書の提出が必要となります。また、消費税計算は弥生会計やマネーフォワードクラウドなどを利用すれば効率的に行えます。
京都・宇治市のケイ・アイ&パートナーズ税理士法人(旧:黒瀬税理士事務所)では、消費税シミュレーション(原則課税・簡易課税)のご提案も行っていますので、お気軽にお問合せください。