1月も下旬となり個人事業主の確定申告の受付時期が近づいてきました。今回は知っていれば使える可能性がある「所得拡大促進税制」をご案内します。所得拡大促進税制とは、簡単に説明しますと従業員様の給与ベースアップを行っていて、前年度よりも給与総額が増加しているなど一定の要件を満たせれば、所得税額(法人税額)から税額控除できる制度です。
要件
①継続雇用者給与等支給額(*1)の増加率が前事業年度比・・・1.5%以上~2.5%未満 → 前事業年度からの給与総額の増加額の15%を税額控除(*3)
②継続雇用者給与等支給額の増加率が前事業年度比・・・2.5%以上、かつ、下記の要件(*2)を満たした場合 → 事業年度からの給与総額の増加額の25%を税額控除(*3)
*確定申告書に添付する明細書・・・中小事業者が給与等の引上げを行った場合の所得税額の特別控除に関する明細書(所得税 令和元年分以降用)
(*1)継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者(前事業年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員のうち、一定の者)に支払った給与等の総額。
(*2)教育訓練費が前年増加比で10%以上、または、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実になされていること。
(*3)税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限。
上乗せ適用を受けるためには
上記②の上乗せ適用(給与総額の増加額の25%を税額控除)を受けるには、継続雇用者給与等支給額の増加率が前事業年度比2.5%以上、かつ、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
1.適用年度終了の日までに、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき、事業年度終了後に報告書を作成し、税務申告時に提出が必要です。
2.教育訓練費が、対前事業年度比で10%以上増加。
1.は適用事業年度終了の日までに、経営力向上計画の認定など受ける必要があり少々ハードルが高くなりますが、2.は社員教育など積極的に行っている方は、教育訓練費を前年と当年を集計してみて、前年増加比が10%以上になれば上乗せ(給与総額の増加額の25%を税額控除)適用を受けることができます。
【教育訓練費とは】
・外部講師等に対して支払う報酬、料金、謝金その他これらに類する費用
・法人等がその国内雇用者に対して、施設、設備その他資産を賃借又は使用して、教育訓練等を自ら行う費用
・施設・備品・コンテンツ等の賃借又は使用に要する費用
・教育訓練等に関する計画又は内容の作成について、外部の専門知識を有する者に委託する費用
教育訓練費の上乗せ要件は、事前に認定を受ける必要がいらず、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で、外部講師等を招く場合のみではなく、外部の教育用コンテンツ使用料や研修講座・講習会・セミナーの受講料などが対象となります。
【教育訓練の対象者】
法人又は個人のその事業に係る国内雇用者。ただし、以下の者は対象外です。
・当該法人の役員又は個人事業主
・使用人兼務役員
・当該法人の役員又は個人事業主と特殊関係のある者(役員の親族、事実上婚姻関係と同様の事情にある者、役員から生計の支援を受けている者、これらと生計を一にする親族)
・内定者等の入社予定者
【確定申告添付書類】
様式は自由ですが、教育訓練費の算出の根拠となる資料の添付が必要です。記載内容は、教育訓練等の実施時期・実施内容及び実施期間・受講者・支払証明などです。イメージは下記のとおりです。
【その他】
・教育訓練費が前年度ゼロで当年度支出がある場合も対象になります。
・使用人の職務の遂行に必要な知識・技術を習得させるための教育訓練の一環として、資格・検定試験を受験させた場合、その費用は教育訓練費に含まれます。
・教育訓練費の教材費は対象となりません。
・教育訓練を受ける従業員に支給する交通費・旅費は、教育訓練費に含まれません。
このように、確定申告時に税額が出た場合、従業員給与のベースアップや前年比で給与総額が増加、社員教育を積極的に行っている方は「所得拡大促進税制」の適用を受けられる可能性があります。節税効果は高いので該当される方は一度検討してみてはいかがでしょうか。
雇用拡大促進税制の詳細は、中小企業庁の中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブックをご覧ください。