実務を行っていて誰もが一度は目にしたことのある美術品等の取扱いですが、以前は美術品等と言えば「非減価償却資産」では?といった感じで、ほとんどが経費(20万円未満を除く)で落とせなかったのですが、平成27年1月1日改正から、実は経費で落とせる範囲が広がりました。今回は、美術品等の経費化について簡単に解説させて頂きます。
1.平成26年12月31日以前の取扱い
平成26年12月31日までの取扱いは
①美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る作品であるか?
・登載→非減価償却資産(経費で落とせない)
②取得価額が1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)以上であるか?
・20万円以上→非減価償却資産(経費で落とせない)
・20万円未満→減価償却資産(経費で落とせる)
これまではこの様に、ほとんどのケースが保有している限り非減価償却資産(経費で落とせない)として資産計上を行っていました。それが、平成27年1月1日の改正から経費で落とせる金額の範囲が広がりました。
2.経費化できる美術品等
そもそも経費化できる美術品とは、絵画や彫刻等の美術品のほか工芸品などで、会社の受付や社長室、クリニックの待合室、会社の応接室などに展示して事業の用に供しているものが該当します。ただ単に経営者の趣味で収集して展示もせずに保有だけしている美術品等については対象となりませんのでご注意ください。
平成27年1月1日の改正からどのように変わったかは、次から取得金額区分ごとに説明いたします。
3.取得価額が30万円未満の美術品等
減価償却資産に該当し、少額減価償却資産(取得価額30万円未満・年間300万円が限度)として、取得価額の全額を経費に落とすことができます。ただし、少額減価償却資産の適用にあたっては青色申告が要件となっていますのでご注意ください。
ちなみに、白色申告者の場合は、取得価額10万円未満は一括で経費化できます。所得価額20万円未満では、一括償却資産(3年償却)が適用可能です。
4.取得価額が30万円以上100万円未満の美術品等
取得価額が30万円以上100万円未満の美術品等については減価償却資産に該当し、次の耐用年数を適用して減価償却費を計算して経費化していきます。
●室内装飾品のうち主として金属製のもの:15年
例えば、金属製の彫刻
●室内装飾品のうちその他のもの:8年
例えば、絵画・陶磁器・彫刻(主として金属製以外のもの)
(例)法人で4/1に80万円の絵画を取得(3/31決算法人。定率法を採用している会社)
80万円×0.250(耐用年数8年定率法償却率)×12/12=20万円
初年度は20万円の減価償却費(経費)を計上することができます。2年目以降は、残存価額に償却率を乗じて経費化していきます。
5.取得価額が100万円以上の美術品等
原則は非減価償却資産となり、経費化できません。
ただし、例外的に、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、その取得価額が100万円以上であっても減価償却資産と取り扱うこととされています。減価償却資産として取扱いができる場合は、例えば、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が挙げられます。
①会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。
②移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。
③他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
100万円以上の美術品等になると、なかなか条件が厳しく経費化は厳しいと思われます。
6.最後に
このように一点あたり100万円未満の美術品等は、会社に展示などを行うことにより事業用に供し、価値が減少していくことから、ほとんどの場合、減価償却資産に該当(美術品等の販売を事業としている場合を除く)して経費化できると考えられます。美術品等がイコール非減価償却資産ではなく、金額などの要件を確認して節税をされてみてはいかがでしょうか。