飲食店を開業する場合は、保健所や税務署、場合によっては消防署、警察署や社会保険事務所などへ各種届け出をする必要があります。特に、保健所へ「食品営業許可申請」を行い、食品衛生法に基づく許可が必要です。
営業許可申請
飲食店の営業を始めるには、まず、食品衛生法に基づいて、お店の所在地を管轄する保健所に「食品営業許可申請」を提出し、食品衛生法に基づく許可が必要となります。
【食品営業許可を受けるための必要な要件】
(1)食品衛生責任者の資格[*1]を持った人を店に1人以上置くこと
(2)都道府県ごとに定められた基準に合致した施設[*2]で営業をすること
[*1]「食品衛生責任者」は、栄養士、調理師等の資格を持っていればなれますが、こうした資格がなくても、「食品衛生責任者養成講習」を受講すれば、資格を取得することができます。この、「食品衛生責任者養成講習」は、都道府県知事等の指定を受けた食品衛生協会等が、年数回~月数回実施しています。受講資格に制限はありません。
[*2]保健センターの食品衛生監視員が実地調査を行い、施設基準に適合しているか、提出された図面と照合し、審査を行います。工事が完了してからの施設検査で不適格とされるとやり直しになりますので、着工前に施設の図面などを持って保健所で事前相談して下さい。
【新たに営業許可を受ける手続きのおよその流れ】
事前相談 → 申請 → 審査(書類審査・実施調査) → 許可
【食品衛生関係手数料】
飲食店営業・・・19,200円、喫茶店経営・・・11,600円(京都市の場合 平成25年1月現在)
【届出時期】
施設完成の10日ほど前。(目安です。)
消防署、警察署への届出
下記のような場合は、届出等が必要です。
○防火管理者の選任届・・・所轄の消防署への届出
店舗の収容人員が従業員も含めて30人を超える場合や、店舗自体の収容人員が30人以下でも建物全体の収容人員が30人を超す場合は、消防法に基づき、1店ごとに1人、防火管理者の有資格者を置くことになっており、消防署へ選任届の提出が必要となります。防火管理者の資格は1~2日間の講習を受けると取得できます。
届出時期
開業まで。避難計画などを示した「消防計画」も一緒に提出必要。
○深夜における酒類提供飲食店営業開始の届出・・・所轄の警察署への届出
居酒屋やバー、スナックなど、お酒を提供する店を深夜(午前0時~日の出時まで)に営む場合は「深夜における酒類提供飲食店営業開始の届出」が必要です。ただし、営業の常態として通常主食と認められる食事を提供して営むものは除かれています。
届出時期
開業まで。
○風俗営業許可申請・・所轄の警察署への申請
スナックやクラブなど、お酒を飲みながら女性と会話を楽しむ社交場的飲食店や、お客が踊れるクラブやディスコなどを営む場合は、風俗営業法に基づき「風俗営業許可申請」を行わなければなりません。こちらは人に関する基準、建物の構造に関する基準、場所に関する基準など、クリアすべき項目が多く、申請から許可を得るまでに1~2カ月近くかかることもあります。
申請時期
営業開始の約2ヶ月前。(目安です。)
税務署への届出
税務署への届出等は、法人・個人で若干ことなりますが、主なものは以下のとおりです。
【個人事業者】
○個人事業の開廃業等の届出書・・・事業開始日から1ヵ月以内
○給与支払事務所等の開設届出書・・・開設した日から1ヵ月以内
○青色申告承認申請書・・・青色申告する年の3月15日まで(その年の1月16日以降に開業した場合は、その開業日より2ヵ月以内)
○源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書・・・源泉徴収した所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。しかし、給与の支給人員が常時9人以下の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税を、半年分まとめて納めることができるのが納期の特例であります。
1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税額・・・7月10日
7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税額・・・翌年1月20日
税務署長から納期の特例申請書の却下の通知がない場合には、この納期の特例申請書を提出した月の翌月末日に、承認があったものとみなされます。
この場合には、承認を受けた月に源泉徴収する所得税から、納期の特例の対象になります。
*青色申告承認申請書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は任意です。選択する場合に申請書を提出します。
【法人事業者】
○法人設立届出書・・・設立の日以後2か月以内(都道府県、市町村にも法人設立届出書の提出が必要です。)
○給与事務所等の開設届出書・・・開設した日から1か月以内
○消費税の新設法人に該当する旨の届出書・・・基準期間がない事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が1千万円以上であるときは、事由が生じた場合速やかに提出。ただし、所要の事項を記載した法人設立届出書の提出があった場合は提出不要。
○青色申告承認申請書・・・設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日
○源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書・・・上記の個人事業者の場合と同じ。
*青色申告承認申請書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は任意です。選択する場合に申請書を提出します。
○その他申請等・・・法人事業者で上記以外の申請書等は、過去の記事の『会社設立(株式会社)の手順 税務署届出編』をご覧になって下さい。
社会保険の手続き
【健康保険・厚生年金】
法人で常時従業員を使用するもの、常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所は強制加入(強制適用事業所)です。ただし、5人以上の個人事業所であってもサービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は、その限りではありません。
したがって、常時5人以上の従業員が働いる個人事業所である飲食店の加入は任意となります。任意加入(任意適用事業所)
*常時従業員を使用する 飲食店 法人の場合→強制加入 飲食店 個人事業所の場合→任意加入
○健康保険・厚生年金保険 新規適用届・・・事実発生から5日以内
○被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届・・・事実発生から5日以内
*事業所の所在地を管轄する年金事務所へ手続きします。
【労災保険・雇用保険】
従業員を雇う場合、加入する必要があります。
○保険関係成立届・・・保険関係が成立した日から10日以内(提出先:所轄の労働基準監督署、所轄の公共職業安定所)
○概算保険料申告書・・・保険関係が成立した日から50日以内(提出先:所轄の労働基準監督署)
○雇用保険適用事業所設置届・・・設置の日から10日以内(提出先:所轄の公共職業安定所)
○雇用保険被保険者資格取得届・・・資格取得の事実があった日の翌月10日まで(提出先:所轄の公共職業安定所)