10月に入り年末調整の時期や来年2月には所得税の確定申告受付のシーズンになります。令和2年分の年末調整・所得税の確定申告より大きな改正点がありますので、今回は主な改正点を簡単に説明させて頂きます。
- 1 基礎控除の見直し
- 2 給与所得控除の引き下げ
- 3 所得金額調整控除の創設
- 4 配偶者控除等・扶養控除の所得要件の見直し
- 5 寡婦(寡夫)控除の見直し
- 6 ひとり親控除の創設
- 7 最後に
基礎控除の見直し
年間合計所得金額が2,400万円以下の方は、所得税の基礎控除額が従来の38万円→48万円へ引き上げられます。ただし、2,400万円超~2,500万円以下の方は控除額が減少し、2,500万円超の方は基礎控除がゼロになります。
納税者本人の合計所得金額 控除額 2,400万円以下 48万円 2,400万円超2,450万円以下 32万円 2,450万円超2,500万円以下 16万円 2,500万円超 0万円 引用元:国税庁 No.1199 基礎控除
給与所得控除の引き下げ
令和2年より一律10万円引き下げられます。給与所得控除の上限額も従来の「給与等の収入1,000万円超 給与所得控除220万円(上限)」→「給与等の収入850万円超 給与所得控除195万円(上限)」に引き下げられます。
令和2年分以降 給与所得控除計算表
給与等の収入金額 給与所得控除額 1,625,000円以下 550,000円 1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円 1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円 3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円 6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円 8,500,001円以上 1,950,000円(上限) 参考:改正前 平成29年分~令和元年分 給与所得控除計算表
給与等の収入金額 給与所得控除額 1,625,000円以下 650,000円 1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40% 1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+180,000円 3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+540,000円 6,600,001円から10,000,000円まで 収入金額×10%+1,200,000円 10,000,000円以上 2,200,000円(上限)
所得金額調整控除の創設
給与等の収入金額が850万円を超えると所得税が増税になることから、介護や子育て世代の負担増にならないように、所得金額調整控除が創設されました。
所得金額調整控除は、給与等の収入金額が850万円を超え、かつ、以下のいずれかに該当する場合に対象となります。
①本人が特別障害者である場合
②23歳未満の扶養親族がいる場合
③特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
所得金額調整控除の計算は以下のとおりです。
(給与等の収入金額*−850万円)×10%=所得金額調整控除額 |
*給与等の収入金額が1,000万円超の場合は、一律1,000万円とする。所得金額調整控除額の上限は15万円。
配偶者控除等・扶養控除の所得要件の見直し
配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の合計所得金額の要件は、基礎控除額見直しに伴い10万円引き上げられます。(合計所得金額 従来38万円以下→48万円以下)
ただし、給与所得控除額も10万円引き下げられていることこら、給与等の収入金額103万円以下は変わりません。
寡婦(寡夫)控除の見直し
ひとり親控除が創設され、特別の寡婦控除35万円と寡夫控除は廃止されました。改正後は、寡婦控除27万円のみとなります。
改正後の寡婦控除の対象は、ひとり親に該当せず、次のいずれかに該当する方です。
①夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
②夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人。なお、この場合は、扶養親族の要件はありません。引用元:国税庁 No1170 寡婦控除
改正後の寡婦控除額は以下のとおりです。
寡婦控除 27万円 |
ひとり親控除の創設
ひとり親控除が創設されたことにより、未婚のひとり親も控除対象となりました。
ひとり親控除の対象は、その年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の三つの要件の全てに該当する人です。
①その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
②生計を一にする子がいること。(この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。)
③合計所得金額が500万円以下であること。
改正前の寡夫・特別の寡婦に該当する方は、上記の①~③の要件のすべてを満たせば、ひとり親控除の対象となりますのでご注意ください。
創設されたひとり親控除額は以下のとおりです。
ひとり親控除 35万円 |
最後に
令和2年分の年末調整は、このように控除額が改正されていますので、扶養控除等申告書・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書の記載や年税額の計算をご注意ください。もちろん、来年2月16日から開始される所得税の確定申告にも影響します。
年末調整の扶養控除等申告書などの記載例は、「令和2年分 年末調整のご案内」の記事をご参考にしてください。