年末調整の時期になり前回までの記事でも関連したところを簡単に解説してきましたが、今年は特に新しい申告書が追加された兼ね合いもあり、実務上、質問が最も多くあります。その申告書は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書」です。長い申告書のタイトルで見るからに難しそうな申告書で、記入するのが億劫になりそうですが、実は簡単なのです。今回はこの申告書を具体例を交えて説明させていただきます。
- 1 基・配・所の申告書記載例
- 2 給与所得者の基礎控除申告書
- 3 給与所得者の配偶者控除申告書
- 4 所得金額調整控除申告書
- 5 最後に
1.基・配・所の申告書記載例
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書の記載例は以下のとおりです。
■記載例の前提条件
国税太郎(本人):給与所得者 収入金額900万円
国税裕子(配偶者):給与所得者 収入金額103万円 70歳未満
国税一郎(子):学生 収入なし 23歳未満の扶養親族(H10.10.10生)
この前提条件をもとに3つの申告書ごとに詳しく確認していきましょう。
2.給与所得者の基礎控除申告書
この申告書は、ほぼ全員が記入する必要があります。ただし、本年中の合計所得金額の見積額が2,500万円超の方は記載不要となります。
*1.の申告書サンプル赤枠部分
給与所得の収入金額を9,000,000円と記入します。記入後、次の給与所得控除額を計算して900万円から控除して所得金額を求めます。
◆給与所得控除額の計算
9,000,000円-1,950,000円=7,050,000円
705万円を所得金額に記載します。あとは、判定に記載していきます。
705万円≦900万円となり区分Iは(A)となります。
基礎控除の額は、判定の表の右側に記載がある48万円となります。
3.給与所得者の配偶者控除等申告書
この申告書は、2.基礎控除申告書の区分Iが(A)~(C)に該当(本人の所得金額1,000万円以下)し、かつ、配偶者の給与の収入金額が181万円以下(所得金額133万円以下)の方は記載する必要があります。
こちらの申告書は前年もありましたが、よく記載が漏れるところですので注意してください。配偶者の給与収入が103万円超だからと諦めずに、103万円超~181万円以下の場合、配偶者特別控除が受けられます。
*1.の申告書サンプル黄枠部分
配偶者の給与収入金額を1,030,000円と記入します。記入後、次の給与所得控除額を計算して103万円から控除して所得金額を求めます。
◆給与所得控除額の計算
1,030,000円-550,000円=480,000円
48万円を所得金額に記載します。あとは、判定に記載していきます。
48万円以下、かつ、70歳未満になり区分Ⅱは(②)となります。
配偶者控除額は区分Ⅱの表の区分Iと区分Ⅱが交わるところで控除額を求めます。このケースですと、区分IがA・区分Ⅱが②となりますので、配偶者控除額は38万円となります。
4.所得金額調整控除申告書
この申告書は、収入金額が850万円を超える給与所得者で、下記の①~④のいずれかに該当する方は記入する必要があります。一般的には、記載が必要とされる方は少ないです。高額所得者は記載漏れがないように注意してください。
①本人が特別障害者に該当する者
②特別障害者である同一生計配偶者を有する者
③特別障害者である扶養親族を有する者
④年齢23歳未満の扶養親族を有する者
このケースですと、本人の給与の収入金額が900万円>850万円で、かつ、23歳未満の扶養親族(H10.10.10生)を有してますので、要件のところへチェックを入れ、扶養親族等のところへ氏名や生年月日などを記載します。
ちなみに控除額を記載する欄はございませんが、このケースですと控除額は以下のようになります。
(900万円-850万円)×10%=50,000円 ∴所得金額調整控除 50,000円
所得金額調整控除申告書は以前の記事で詳しく解説していますので、下記リンクをご参照ください
所得金額調整控除とは?
5.最後に
このように給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書は記載は意外と簡単です。11月は年末調整の申告書類の記載で悩まれる方が多いと思いますが、早いめに記載して会社へ提出しましょう。
京都・宇治市のケイ・アイ&パートナーズ税理士法人(旧:黒瀬税理士事務所)では、会社の年末調整の計算や源泉徴収票発行、法定調整合計表の作成など対応は可能ですので、お気軽にお問合せください。