災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを「雑損控除」といいます。
この雑損控除と、災害減免法による所得税の軽減免除について説明します。
■雑損控除
雑損控除の対象になる資産の要件
損害を受けた資産が次のいずれにも当てはまること。
(1)資産の所有者が、納税者又は納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が38万円以下の者。
(2)生活に通常必要な住宅、家具、衣類などの資産であること。
(事業用の資産や別荘、書画、骨とう、貴金属等で1個又は1組の価額が30万円を超えるものなどは当てはまりません。)
損害の原因
次のいずれかの場合に限られます。
(1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3)害虫などの生物による異常な災害
(4)盗難
(5)横領
なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。
雑損控除として控除できる金額
次の二つのうちいずれか多い方の金額です。
(1)(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
(2)(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
(注)損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
差引損失額の計算
差引損失額=損害金額+災害関連支出の金額ー保険金などにより補てんされる金額
*1「損害金額」とは、同じものを今購入するのに必要な価格-使用年度による減価償却分。
*2「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額等です。
*3「保険金などにより補てんされる金額」とは、災害などに関して受取った保険金や損害賠償金等の金額です。
(義援金や災害弔慰金、支援金などは、原則差し引く必要はない。)
*4 東日本大震災により被害を受けた住宅や家財、車両の損失額は「合理的な計算方法」がございます。
確定申告書に雑損控除に関する事項を記載
このように、第1表と第2表に必要事項を記載します。(上記の設例を基に記載しています。)
それと災害関連支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示が必要となります。
火災の場合には消防署、盗難の場合には警察署の証明が必要とされています。
■災害減免法
災害減免法による所得税の軽減免除
所得金額の合計額が1,000万円以下の方が災害により住宅や家財について損害を受け、その損害額(保険金、損害賠償金などで補填される部分を除く)が、住宅や家財の価額の2分の1以上である場合に受けられる税金の減免措置です。
*1 損害について雑損控除を受けた場合には、重ねてこの減免を受けることはできません。
*2 いずれの適用を受けることが有利であるかは、所得金額や損害金額などにより異なります。
災害減免法は、当年の所得税だけを軽減・免除するものです。損害額が所得金額を超え1年で控除できない場合は、損害の繰越ができる雑損控除を選択するほうが有利ではないでしょうか。
確定申告書に軽減額を記載
災害による被害の状況、損害金額を記載した「損失額の明細書」を確定申告に添付する。