物事の理由のなかで最大にして最高の理由は「好き」と「嫌い」でしょう。
どんな理由をいくつ並べても、「だって好きだから」あるいは「だって嫌いだから」以上の理由はなかなか見つかりません。「好き」「嫌い」を決めるのは人間の本能的な部分なので、相手にそう告げられたら「そうですか・・・わかりました」と引き下がるしかほかになく、そこに反論の余地はまったくありません。「好き」と「嫌い」はそのくらい強烈に個人的な理由であり、一種の最終勧告であり、だからこそ最大にして最高の「言い訳」にもなってしまいます。
例えば、釣りが趣味なら「釣り」を楽しめばいいでしょう。魚が釣れても釣れなくても、好きな釣りを思う存分楽しめば大満足です。
しかし、「魚を釣る」という仕事を与えられた場合には事情が一変します。魚を釣らなければならない以上、何がなんでも魚を釣る。このとき釣りが好きかどうかは一切関係ありません。釣りが嫌いでも魚を釣る。道具がなければ自分で道具を用意して、釣れる場所を探してそこまで出向き、一生懸命に努力をして実際に魚を釣り上げなければなりません。
ところが、いざ商売で大きな問題に直面すると「好きなことだから」とか「嫌いなことまでして」などと自分自身に言い聞かせるようにしてその場から逃げてしまう。
このようなことは誰もが経験したのではないでしょうか。現実的に商売は、どんなことがあっても利益を確保しなくては長く続きませんし、苦手でも頭を下げる営業が必要な場合もあるでしょう。自分にとっての「好き」「嫌い」は最大にして最高の「理由」だからといっても、商売を営む上では最大にして最高の「言い訳」になりかねません。
目の前に大きな壁が立ちはだかったとき、「できない理由」は簡単に探せます。そうであるならば、きっと「できる理由」も見つけ出すことができるはずです。自分に「言い訳」をしていないか?時にはそのような視点から商売を省みることも大切でしょう。そこには大きなヒントが隠れているかもしれません。