会社の2月決算や3月決算の申告期限が近づいてきました。そんな中、税額が多く出た時に節税対策として活用できるのが「所得拡大促進税制」です。積極的に賃金アップを行っている会社は適用できる場合が多く、青色申告をされている個人事業主や会社で、税額があり、次の3つの要件を満たせば法人税や所得税から一定額を控除できる制度です。今回は例示を交えて簡単にご案内いたします。
具体的な計算の前提条件
株式会社(資本金500万円、青色申告、中小企業者等に該当)の平成30年3月決算期
⑴適用年度(自:平成29年4月1日~至:平成30年3月31日)
① 雇用者給与等支給額 30,000,000円
② ①のうち一般被保険者である継続雇用者に係る金額 25,000,000円*
*計算を簡単にするために②の金額は継続雇用制度対象者に係る金額は0円とする。
③ 月別支給対象者数を合計した数 40人
④ 法人税額 5,000,000円
⑵前事業年度(自:平成28年4月1日~至:平成29年3月31日)
① 雇用者給与等支給額 27,000,000円
② ①のうち一般被保険者である継続雇用者に係る金額 22,000,000円*
*計算を簡単にするために②の金額は継続雇用制度対象者に係る金額は0円とする。
③ 月別支給対象者数を合計した数 39人
⑶基準事業年度(自:平成24年4月1日~至:平成25年3月31日)
① 雇用者給与等支給額 23,000,000円
要件1
雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が2%~5%以上であること。
*雇用者給与等支給とは、一般的に会社の決算書上の給与手当、雑給、賞与、賃金手当などです。役員等の給与は除かれます。(国内の事業所の勤務する雇用者が対象、雇用保険一般被保険者でない者も含まれる。)
(例)
① 雇用者給与等支給増加額
30,000,000円-23,000,000円=7,000,000円
② 増加促進割合
23,000,000円×3%*=690,000円 *H29.4.1に開始する事業年度(中小企業者等)
③判定
7,000,000円≧690,000円 ∴OK
要件2
雇用者給与等支給額(適用年度)が比較雇用者給与等支給額(前事業年度)を下回らないこと。
(例)
30,000,000円≧27,000,000円 ∴OK
要件3
平均給与等支給額(適用年度)が比較平均給与等支給額(前事業年度)を超えること。
*平均給与等支給額とは、継続雇用者で雇用保険に規定する一般被保険者に該当する者に対して支給された給与等の支給額をその給与等月別支給者数の合計数で除して計算した金額。(継続雇用制度対象者を除く)
(例)
① 平均給与等支給額
25,000,000円÷40人=625,000円
② 比較平均給与等支給額
22,000,000円÷39人=564,102円
③判定
625,000円>564,102円 ∴OK
具体的な税額控除額の計算
〇 税額控除額加算の判定(平成29年4月1日以降開始事業年度より。税制改正点なので注意)
(625,000円-564,102円)÷625,000円=9.7%≧2%
∴ 2%以上 税額控除加算あり
〇 税額控除額の計算
① 税額控除額
7,000,000円×10%+(30,000,000円-27,000,000円)×12%=1,060,000円
② 税額控除限度額
5,000,000円×20%(中小企業者等)=1,000,000円
平成30年3月31日決算期の所得拡大促進税制による税額控除額
1,060,000円>1,000,000円
∴1,000,000円が法人税額から控除される
例示では、法人税額5,000,000円が所得拡大促進税制を適用すれば4,000,000円になり、なんと1,000,000円が節税できます。法人税額が下がることによって、法人都道府県民税や法人市民税の所得割も下げることができますので、節税効果はより大きくなります。ここ数年、人件費が増加している場合は検討されてみてはいかがでしょうか。この制度は措置法の規定ですので、当初申告が要件となっています。適用年度において適用を失念してしまうと、更正の請求等により救済措置が受けられませんのでご注意ください。